色を見せた一方で、戦術遂行力はまだまだこれから――。シャビの初陣となったエスパニョール戦でのバルセロナのパフォーマンスを一言で表すと、こうなる。

 シャビの就任は今月6日。それから試合まで2週間の準備期間があったわけだが、問題は、大半の選手が代表の活動でチームを離れていたこと。そのような状況ではできることは当然限られてくる。

 そんな中でも、はっきりと色を確認できたのはシャビの手腕の高さの裏返しであろう。ロナルド・クーマン前政権期と比べて変わった点は主に3つある。まずその1つ目はウイングのポジション取りだ。ワイドに開いてプレーすることで、対面する相手のサイドバックの注意を引き付け、ゴール前のスペースを広げるという狙いである。怪我人が続出する中、生粋のウインガーである17歳のイリアス・アコマックを先発に抜擢したのも、その一環に他ならない。


 加えてクーマン時代にサイドの攻守を一手に担っていたのが両サイドバックだった。しかし前方にウイングが構えることで、オスカル・ミンゲサとジョルディ・アルバは、これまでよりもビルドアップをサポートし、中盤のパスワークに加わる場面が増加。攻撃参加する際も後方から走り込むという形がメインだった。

 2つ目の変化は、インテリオールの役割だ。この試合ではフレンキー・デヨングとニコ・ゴンサレスが務めたが、頻繁にゴール前に顔を出し、ワントップのメンフィス・デパイよりも位置取りが高くなる場面もあった。2人に求められていたのは、ジョゼップ・グアルディオラ政権下でのマンチェスター・シティのイルカイ・ギュンドアン、ベルナルド・シウバ、ケビン・デ・ブルイネのような振る舞いで、デパイの動きに呼応して、ハーフスペースに走り込んだり、フィニッシュに絡む動きを見せた。

 もっとも、狙いはそうであっても、攻撃の起点として十分に機能したとは言い難い。最大の理由は、2人ともライン間でボールを収める役割に必ずしも適していないこと。逆にそのプレーを得意にしているのがガビだ。実際、後半、彼が中央に顔を出す機会が増えると攻撃にもう一つの起点が生まれ、さらにその動きで相手サイドバックが釣り出されたことでジョルディのオーバーラップの頻度も増加。その結果、攻撃に厚みが出て、先制点もそうした流れの中で生まれた。





 そして3つ目の変化は、守備の仕方だ。

 クーマン時代は、とりわけ中盤においてボール支配率が低下するとマンマーク気味に相手選手を追い回す傾向が強かったが、DFラインを押し上げて全体をコンパクトにして組織的に守る意識が徹底。エリク・ガルシアとジェラール・ピケの両CBもアグレッシブに相手の前に出てボールを奪う頻度が増え、セルヒオ・ブスケッツの後方のスペースをケアも分担して受け持つことができていた。

 もっとも、そのプラン通りに守ることができたのは、後半開始早々にデパイが先制ゴールを挙げるまでだった。エスパニョールのビセンテ・モレーノ監督がマヌ・モルラネスらを投入しエスパニョールが反撃に転じると、中盤の攻防で劣勢を強いられてDFラインが下がり、サイドから突破を許す場面が増えた。幸い相手のシュートがポストに嫌われるなどツキにも恵まれ逃げ切りに成功したが、ボール非保持の局面での守備の脆さを改めて露呈した。

 遂行力を高めていくことが今後の課題となるが、間断なく23日にはベンフィカをホームに迎え、チャンピオンズ・リーグの決勝トーナメント進出を懸けた大一番を控える。シャビの突貫工事は続いていく。

文●アルベルト・モレン
翻訳●下村正幸